脳神経外科

より低侵襲に、より正確にLess Invasive, More Precise

脳神経外科は中枢神経系という「最重要組織」を手術の対象とします。
当然ですが、手術だけで治癒する疾患は限られた少数のもので、専門性の高い診療科といえます。

脳神経外科(名誉院長): 坂本 真幸

対象疾患Target Disease

脳腫瘍:
髄膜腫、神経鞘腫、血管芽腫、神経膠腫
下垂体・傍鞍部腫瘍:
下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫
出血性脳血管障害:
脳動脈瘤・脳動静脈奇形
閉塞性脳血管障害:
もやもや病、主幹動脈閉塞・狭窄症
神経血管症候群:
三叉神経痛・顔面けいれん
水頭症:
特発性正常圧水頭症 、続発性正常圧水頭症、その他水頭症

透明な理解への取り組みJapan Neurosurgical Registry

日本脳神経外科学会 手術症例登録事業の概要

当科は一般社団法人National Clinical Database(NCD)が実施するデータベース事業に参加しています。
この事業は日本全国の手術・治療情報を登録し集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者様に最善の医療を提供することを目指すプロジェクトです。
この法人における事業を通じて、患者様により適切な医療を提供するための医師の適正配置が検討できるだけでなく、当科が患者様に最善の医療を提供するための参考となる情報を得ることができます。
何卒趣旨をご理解の上、ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

1. NCDに登録する情報の内容

2015年1月1日以降、当科で行われた手術と治療に関する情報、手術や治療の効果やリスクを検証するための情報(年齢や身長、体重など)を登録します。
NCDに患者様のお名前を登録することはなく、氏名とは関係のないIDを用いて登録します。
IDと患者様を結びつける対応表は当科で厳重に管理し。NCDには提供しません。

2. 登録する情報の管理・結果の公表

登録する情報は、それ自体で患者様個人を容易に特定することはできないものですが、患者様に関わる重要な情報ですので厳重に管理いたします。
当科及びNCDでは登録する情報の管理にあたって、情報の取り扱いや安全管理に関する法令や取り決め(「個人情報保護法」「疫学研究の倫理指針」「臨床研究の倫理指針」「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等)を遵守しています。
データの公表にあたっては、NCDが承認した情報のみが集計データとして公表されます。登録するデータがどなたのものであるか特定されることはありません。

3. 登録の拒否や登録情報の確認

データを登録されたくない場合は、登録を拒否して頂くことができます。当科のスタッフにお伝えください。
また、登録されたご自身のデータの閲覧や削除を希望される場合も、当科のスタッフにお知らせください.
なお、登録を拒否されたり、閲覧・修正を希望されたりすることで、日常の診療等において患者さんが不利益を被ることは一切ございません。

NCD担当者の訪問による登録データ確認への協力

当科からNCDへ登録した情報が正しいかどうかを確認するため、NCDの担当者が患者様のカルテや診療記録を閲覧することがあります。
当科がこの調査に協力する際は、NCDの担当者と守秘義務に関する取り決めを結び、患者様とIDの対応表や氏名など患者様を特定する情報を院外へ持ち出したり、口外したりすることは禁じます。
本事業への参加に関してご質問がある場合は、当科のスタッフにお伝えください。
また、より詳細な情報は下記に掲載されていますので、そちらもご覧ください。

一般社団法人National Clinical Database(NCD)

低侵襲手術Less Invasive Surgery

解剖学的複雑性・機能的重要性に対する 低侵襲性という相反するハードルを上げ続けています。

Less Invasive Surgery

手術を行うにあたっては、解剖学的な複雑性・機能的な重要性に対しての安全性を確保しつつ、可能な限り患者様の負担が少なくなるような 「低侵襲手術」を行うよう努力しています。

低侵襲手術

低侵襲手術の最初の努力は、手術にともなう傷を極力小さくすることです。
手術にともなう傷を小さくすると、露出範囲が限られますから、手術に必要な操作空間も小さくなります。
一般的に操作空間が小さくなるに従い、操作の自由度が下がりますから、安全・正確な手術操作は困難になります。

頭蓋底手術

操作空間が小さくなることにともなう、操作性・安全性の低下を補うために、頭蓋底手術手技を効果的に組み合わせています。

頭蓋底手術とは頭蓋底正中線近傍に発生する病変(髄膜腫・神経鞘腫など)に対し、 眼窩・蝶形骨・錐体骨・斜台などの頭蓋底面を構成する骨を削除することで操作空間を拡大し、安全な手術を可能にするという、脳神経外科手術手技上の概念です。

一般的には頭蓋底骨削除のために、大きな皮膚切開と眼窩縁・頬骨・乳様突起外板などの切離を要する、拡大術式を指すことが多く、 低侵襲手術の対極のような印象を受けてしまいますが、上述のごとく安全性の確保を目的に術野を拡大するという考えは、根底では低侵襲手術のコンセプトと相容れるものなのです。

私は頭蓋底手術手技を改良し、皮膚切開は小さいままで、不必要な骨切りも行わず、操作性の向上と安全性の確保のために寄与すると考えられる、最小限の頭蓋底骨削除に努めています。

手術計画Planning

「手術」を客観的に表現すると、
「疾患の治療のため、身体に傷をつけていく、一連の操作手順ならびに操作」
に過ぎません。

安全・正確な手術を遂行するためには、

1. 無理なく遂行可能な最小の操作空間を、最もスマートに展開するための手術計画を立て
2. 手術計画どおり正確に遂行するだけです。

良好な手術成績を維持するため、上記2点を徹底しています。

磨き上げるRefining

「拡大術式」や「難易度が高い」と思われる手術も、 客観的にみれば「一連の操作手順ならびに操作」のひとつに過ぎません。

より低侵襲な手術を目指し、術式を改良するにあたっても、
「無理なく遂行可能な最小の操作空間を、最もスマートに展開する。」

コンセプトは変わりません。

最適化への飽くなき努力Invasive as it Is, Strive to Minimize

上述の例に代表される低侵襲手術に対して、近年の画像診断技術の発達が果たした役割は大きいです。
従来の画像は5mm間隔の2次元平面画像ですが、撮像装置の高性能化・PCの処理能力の向上により、 0.25mm間隔の画像をワークステーションで3次元に再構成し、手術のシミュレーションが可能になっています。
また、種類の異なる画像(MRIと3DCTAなど)を融合させて、実像に迫る3次元画像が得られるようになっています。

病変の質的診断に最も有用なのはMRIです。 磁場の種類を変えることでコントラストの違う画像が無数に得られますので、目的とする病変を最も良く抽出するような種類の磁場(シーケンス)を選んで診断を突き詰めます。
形態情報を得るための従来のシーケンスだけでなく、
・病変の物質組成を調べるMRS
・組織の異方性を調べるテンソル画像
・テンソル画像を利用し神経線維の走行を描出するトラクトグラフィー
・脳の特定の部位を遂行課題で賦活化させ、活動部位を同定するためのfMRI
などを利用して、様々な側面から病変の情報を抽出します。

このように、MRIだけに限っても得られる情報は多岐にわたり、個々の情報量もコンピューターを介さないと処理できないほど膨大なレベルになっています。
当然「最重要組織」を扱うのですから、あらゆる側面から情報を得て、診断・治療に利用するのは言うまでもありません。 これからも、画像診断をはじめとする診断技術の進歩にcatch upしつつ、診療レベルの向上につとめていきたいと思います。