当院であつかっている代表的な脊椎脊髄疾患と手術方法について説明します。 いずれも顕微鏡を用いて、神経の周囲を観察しながら安全に行います。
新しい治療法の紹介 頚椎人工椎間板手術/椎間板内酵素注入療法
頚椎人工椎間板手術
頚椎椎間板ヘルニアに対して、これまでケージやプレートなどによりしっかり固定する手術が行われてきましたが、固定後の頚椎の不自然な動きがお隣の椎間板に与える影響が問題とされてきました。
これを解消するために、本来の椎間板の自然な動きに近い固定装置、いわゆる人工椎間板が開発され、手術後の負担軽減効果が期待されています。
頚椎の変形が少ないなど一定の条件を満たせば、治療の選択肢にすることができます。
当院でも導入しておりますので、お気軽にご相談ください。
椎間板内酵素注入療法
腰椎椎間板ヘルニアに対して、椎間板内に分解酵素(コンドリアーゼ)を注入し椎間板の圧力をさげることで、圧迫されていた神経の症状を改善する方法です。
手術と異なり治療直後から症状が改善するのではなく、効果が得られるまで通常2~3週間を要しますが、切開せず針をさすだけで済むという利点があります。
治療の対象となるかどうかは、ヘルニアの形状などによって決まりますので、専門医にご相談ください。
対象疾患Target Disease
頚椎症
加齢による椎間板や椎体の変形にともない、頚椎内部を走行している脊髄や神経根が圧迫され症状を来たす状態です。
神経根が圧迫されると、肩から腕にかけての痛みやしびれが出現します。
脊髄が圧迫されると、手足のしびれに加え、箸が持ちづらい、階段昇降や排尿がしづらいなどの症状が加わります。
日常生活に支障をきたす場合には、手術による減圧が必要です。
圧迫の状態にあわせて、前方到達法と後方到達法が使い分けられますが、症状の改善が期待できます。
前方到達法では従来の自家骨にかわり人工のケージを用いた固定を行っています。
後方到達法では、筋肉を温存した方法を採用して、術後の痛みの軽減が得られています。
筋肉を温存した椎弓形成術
頚椎の横断面
骨のなかに脊髄(黄色)があります。
筋肉(赤)は骨についています。
背中側から切開
筋肉をつけた状態で骨(棘突起)を左右に分割します。
さらに脊髄を包む骨(椎弓)を左右に開いて神経の減圧を図ります。
スペーサーを椎弓の間に挿入
棘突起をスペーサーに縫着します。
この方法では、筋肉を剥離せずに脊椎管を拡大することが可能です。
後縦靭帯骨化症
脊柱管の内側にある靭帯が徐々に骨化してくる病気で、東洋人に多いとされています。
脊髄が圧迫されますので、頚椎症と同じような症状を起こしてきます。
頸椎症に準じた手術を行いますが、必要に応じて骨化巣も取り除きます。
腰部脊柱管狭窄症
加齢による腰椎の変形にともない、内部を走行している馬尾神経などが圧迫され、下肢のいたみやしびれを生じる状態です。
立位や歩行を続けると症状が悪化するため、休みながらでないと歩けない間欠性跛行が特徴的です。
圧迫の原因となっている靭帯や骨の一部を取り除く減圧術のみで症状改善が期待できますが、腰椎の不安定性などが加わっている場合には、固定術を併用することがあります。
腰椎椎間板ヘルニア
加齢によって張りを失った椎間板が突出して神経にさわり、痛みやしびれなどを起こすおなじみの病気です。
自然によくなることが多いため、まず薬物にて経過をみますが、症状が長引き生活に支障をきたす場合には手術を行います。
手術は顕微鏡を用いてヘルニアを摘出する方法に加えて、内視鏡をもちいた摘出術(PED)も行っています。
内視鏡を用いた椎間板摘出術(PED)の様子
内視鏡を挿入
細い管を腰部に刺し、ここから内視鏡をいれます。
椎間板摘出
内部の様子をモニターで観察しながら、摘出操作をします。